トランジスタのスイッチ回路の設計手順を紹介!

電子回路

トランジスタは増幅回路として使用するイメージがありますが、スイッチとして使用する機会も多いです。特にマイコンから直接大きな負荷を駆動させることは難しため、トランジスタをスイッチとして使用しドライブさせる場合があります。

トランジスタをスイッチとして使用する場合はそれに合わせた設計をする必要があります。今回はトランジスタをスイッチとして使用するドライブ回路の設計手順について紹介します。

マイコン搭載の電子回路を設計する人にとっては必要な知識です。

トランジスタによるスイッチ回路

Vccは回路の電源電圧、PWはマイコンからの信号と考えて下さい。
PLは負荷でTR1でRLを駆動させる回路となります。
PW(マイコンからの信号)でTR1を駆動させます。

トランジスタのスイッチ回路の仕様

・Vcc(電源電圧)=5V
・RL=250Ω(負荷電流≒20mA)
・PW=0⇔5Vの矩形波

Vcc(電源電圧)は一般的な5V設定とします。
負荷のRLは250Ω相当とし負荷電流は約20mAを流す仕様で設計します。
マイコンからの信号は一般的な0⇔5の矩形波設定とします。

部品の選定

TR1の選定

東芝のトランジスタから部品を選定しました。

<選定条件>
・コレクタ-エミッタ間電圧=10V以上
・コレクタ電流=40mA以上

Vcc(電源電圧)と負荷電流から部品選定の最低条件は上記としました。
上記条件のなかから今回は『2SC2712』を選定しました。

TR1のベース電流算出

ベース電流は負荷電流とTR1のhFEから算出します。
負荷電流が20mA、hFEはスイッチとして使用するため10倍で設計します。
10倍とした理由はトランジスタをスイッチとして利用する場合、Icに対して十分なIbを流す必要があるためです。また今回はコレクタ-エミッタ間飽和電圧の測定条件がIc=100、Ib=10mAで10倍だったためその条件を参考に10倍としました。

トランジスタをスイッチとして使用する場合は直流電流増幅率の値を持ってこないように注意してください。直流電流増幅率のhFEは増幅回路として使用する場合の値で今回はスイッチとしてトランジスタを使用するため当てはまりません

上記より求めるIb(ベース電流)は以下となります。
Ib=負荷電流/Hfe=20mA/10=2mA

R2の抵抗値算出

R2はTR1の誤動作防止用のダンピング抵抗です。
感覚的には10kΩ程度の抵抗を付けることが多いです。

注意点としてはあまり大きい抵抗を付けるとTR1のコレクタ遮断電流(Icbo)により誤動作する懸念があります。

選定した部品のIcboはデータシートで確認したところTa=25℃で最大0.1uAです。
仮にR2にIcboが全て流れたと仮定した場合、TR1のベースに発生する電圧は以下となります。

Vbe=10kΩ×0.1uA=0.001V

上記より誤動作の懸念はないため10kΩとします。

R1に流す電流を算出

R1に流す電流を算出します。
R1に流れる電流はトランジスタのベースに流れるIbとR2に流れるIR2の総和となります。
IR1=Ib+IR2

Ibに流す電流ですが負荷電流が20mAのため1/10の2mAとします。
IR2ですが抵抗値10kΩとVbeが約0.7Vから以下とします。
IR2=Vbe/R2=0.7V/10kΩ=0.07mA

上記よりIR1に流れる電流はIR1=2mA+0.07mA=2.07mAとなります。

R1の抵抗値算出

抵抗値を算出します。
上記で求めたIR1に流れる電流とPWがHi時の電圧から抵抗値の定数を決定します。

R1=PWがHi時の電圧/IR1=5V/2.07mA≒2.41kΩ

E24系で考えた場合一番近いのが2.4kΩのため2.4kΩとします。

シュミレーションで動作確認

最後にシュミレーションを用いて動作確認します。
シュミレーションの回路は以下となります。

TR1がONする時、
①PWがHi状態となる(5Vとなる)
②TR1のベースに電圧が印加(0.74V程度※トランジスタにより変化)
③TR1がON
④RLに電流が流れる(負荷電流が流れる)

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