抵抗によるプルアップ&プルダウン回路の定数選定方法を詳しく解説!

電子回路

今回のテーマは抵抗によるプルアップ&プルダウン回路です。
主にマイコンを搭載した回路を設計する場合に使用します。
回路の説明から定数の選定方法までを紹介します。

抵抗のプルアップ&プルダウン回路とは?

以下のような回路がプルアップ&プルダウン回路となります。
赤丸で囲った部分がプルアップ抵抗及びプルダウン抵抗といいます。

<役割>
マイコンの入力出力端子の電位を固定させるための抵抗

<プルアップ抵抗&プルダウン抵抗がない場合の懸念事項>
入出力端子(I/O)を出力端子としてしようしていてもリセット直後は入力端子になっている場合があります。その場合、プルアップ抵抗及びプルダウン抵抗がないと出力端子の電位が定まらないことがあります。その結果、マイコン内部で貫通電流が流れたり出力端子の先に繋がる回路が誤動作する可能性があります。

<プルアップ抵抗が及びプルダウン抵抗が不要な場合>
ソフトにてマイコン内部でプルアップ及びプルダウンさせている場合。但し、マイコンによっては設定できない場合があります。

プルアップ抵抗とプルダウン抵抗の定数の求め方

①プルアップ抵抗の定数の算出方法(CMOS出力の場合)

参考に以下回路における定数の選定方法を紹介します。

・VH=ICがH認識する電圧
・IL1=Vccからマイコン側へ流れるリーク電流(漏れ電流)
・IL2=VccからIC側へ流れるリーク電流(漏れ電流)

回路動作としてはリーク電流によりICがHi認識できないことがないように定数を設定する必要があります。ICがHi認識できない=リーク電流と抵抗による電圧降下で3.5Vを下回らないことです。よって以下式でRHを求めます。

VH≦Vcc-RH(IL1+IL2)
RH≦(V㏄-Vh)/(IL1+IL2)

以下条件で実際に抵抗の定数を求めてみましょう。
・Vcc=5V
・VH=3V
・IL1=IL2=1μA

計算は以下となります。
RH≦(5V-3V)/(1μA+1μA)
RH≦1MΩ

②プルダウン抵抗の求め方(CMOS出力の場合)

参考に以下回路における定数の選定方法を紹介します。

・VL=ICがL認識する電圧
・IL1=マイコンから流れ出るリーク電流
・IL2=ICから流れ出るリーク電流

回路動作としてはリーク電流によりICがL認識できないことがないように定数を設定する必要があります。ICがL認識できない=リーク電流と抵抗による電位がVLより大きくならないことです。よって以下式となります。

VL≦RL(IL1+IL2)
RL≦VL/(IL1+IL2)

以下条件で実際に抵抗の定数を求めて見ましょう。
・VL=1V
・IL1=IL2=1μA

計算は以下となります。
RH≦1V/(1μA+1μA)
RL≦500kΩ

③プルアップ抵抗の求め方(オープンドレインの場合)

・VL=ICがL認識する電圧
・IOL=マイコンがL出力時の最大電流
(マイコンの端子に引き込む事ができる電流)

回路動作としてマイコンがL出力時にマイコン側に流れる電流がマイコンの端子に流す事ができる電流以下になるように抵抗値を選定します。よって以下式でRHを求めます。

・VL≦Vcc-RpuIOL
・Rpu≧(V㏄-VL)/IOL

以下条件で実際に抵抗の定数を求めてみましょう。
・Vcc=5V
・VL=1.5V
・IOL=5mA

計算は以下となります。
・RH≧(5V-1.5V)/1.5mA
・RH≧300Ω

最後に

今回はマイコンの入出力端子で使用されるプルアップ抵抗とプルダウン抵抗について紹介しました。実際に定数を選定する際は、Vccやリーク電流の最悪値を使用して定数を選定する必要があります。Vccでは電源回路の電圧バラツキを考慮して計算する。リーク電流では温度特性による電流変化を考慮して計算する。

以上、最後までお読み頂きありがとうございました。

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