トランジスタ1石の電源回路設計手順を紹介します!

電子回路

電子回路ならほぼ必ず搭載されている電源回路ですが、現在では色々な種類の電源ICがあるため簡単に設計する事ができます。

一方で電源ICを使用しなくてもトランジスタとツェナーダイオードを使用すれば簡単に電源回路を作ることができます。メリットしては安いことです。

そのため簡単な電子回路を設計するにはまだまだ使用価値がある為、今回は動作~設計手順について紹介します。

電源回路の仕様について

電源回路の仕様は以下としました。
・入力電圧=12V
・出力電圧=5V
・出力電流=20mA
・想定使用温度=25℃

設計する回路は以下となります。

V1が入力用の電源、I1が20mAの負荷電流として見て下さい。
回路としてはZD1のツェナーダイオードとTR1のNPNトランジスタで5Vの電圧を生成しています。シンプルにするため上記回路としましたが実際の回路は入力側と出力側に平滑用のコンデンサを実装するのが一般的です。

電源回路の設計

まずは部品選定から実施します。

TR1の選定

今回は東芝の部品からトランジスタを選定します。

仕様から選定条件は以下としました。
・コレクタ電圧(Vceo)は25V以上
・コレクタ損失は0.3W以上

コレクタ電圧は入力電圧が12Vのためディレーティングを取って25V以上の部品を選定することにしました。どの程度ディレーティングを取るかは設計者の考え方次第ですが余裕度を取ることは必ず必要です。

コレクタ損失は想定される印加損失が(12V-5V)/20mA=140mWのためディレーティングを取ってTa=25℃時で0.3W以上とします。

上記の結果、東芝製トランジスタの2SC5976を選定しました。

ZD1の選定

今回はロームから選定します。

仕様から選定条件は以下としました。
・ツェナー電圧が5.6V付近
・許容損失が100mW以上

TR1のVbeが約0.6V、電源回路の出力電圧が5Vのためツェナー電圧は5.6V付近のものを選定します。許容損失は10mA程度流れても問題ないように100mW品以上を選定しました。

上記の結果、ローム製のCDZV5.6Bを選定しました。

R1の定数選定

最後にR1の定数を選定します。

R1の役割はZD1を動作させるために流す動作電流とTR1のベースに流す電流を規定します。そのため動作電流とベース電流を求めてR1の定数を決定します。

①ベース電流の算出

必要なベース電流は以下で算出できます。
Ib=Ic÷hfe

Icは出力電流となるため20mAとなります。
hfeは部品のデータシートから読み取ります。
読み取った結果、常温でIc=20mAにおける最小値は258となりました。

上記より最大でもIb=20mA/258=0.08mAとなります。

②動作電流の算出

ツェナーダイオードを動作させるためにはある一定の電流を流す必要があります。その電流はあまり小さすぎると安定した電圧を保持せず、多すぎると損失が大きくなります。

ツェナー電圧とツェナー電流の特性グラフを基に基準となる電流値を決めます。考え方としてはツェナー電圧が安定し且つTR1のベース電流に対して十分大きい電流値とします。

以下ツェナー電圧とツェナー電流の特性グラフです。赤丸箇所が使用する箇所となります。

上記2点を考慮して、ツェナー電流を1mA狙いで設計します。
そのためR1の抵抗値は(12V-5.6V)/1mA=6.8kΩとなり、E24系列で丁度6.8kΩがあるため6.8kΩとします。実際は計算で求めた抵抗値に対して一番近い抵抗値を選定します。

電源回路の動作

①電源投入直後はV1→R1の経由で電流が流れる。
(流れる量はZD1の漏れ電流分のため非常に少ない)
②ZD1のカソード電圧がツェナー電圧に達すると一気に電流が増加。
③I1がONすると(負荷電流が流れると)TR1のベース電流が流れてTR1がON。
④TR1のVbe間に0.6V程度の電位差発生。

最後に

トランジスタ1石の電源回路の設計手順を紹介しました。
上記の手順は一例のため必ずしも上記手順で設計しなくても問題ありません。

今回は使用温度をTa=25℃としましたが、温度環境が変動する場合はその分を考慮して検討する必要があります。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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