全ての電子回路に使用されている電子部品と言っても過言では抵抗ですが、部品選定する際には基礎的な知識をしっかり押さえる必要があります。今回はそのなかでも主にチップ抵抗について最低限必要な知識を紹介します。
チップ抵抗の構造
簡単に書くとチップ抵抗は以下構造をしています。
・抵抗体:抵抗値の基となる部分(抵抗値を決めている)
・保護膜:抵抗体を外部から保護するための膜
・基体:抵抗体と端子を支えている部分
・端子:基板に電気的に接続するための部分
抵抗に関する用語を紹介
抵抗を使用する上で知っていて頂きたい用語集です。抵抗を選定する上では必要な知識のため知らない用語がありましたら理解する必要があります。
【公称抵抗値】
メーカが製造する際に目標とする抵抗値。10kΩの抵抗といっても実際は10kΩピッタリの抵抗値にならず若干のズレは発生しています。ただ、10kΩになるように作りこんでいるためこの10kΩの値が公称抵抗値となります。
【定格電力】
抵抗に印加できる電力の最大値。
以下計算式で抵抗に印加される電力は計算できます。
・定格電力=印加電圧×印加電流=印加電圧^2/公称抵抗値
【定格周囲温度】
抵抗を使用できる周囲の温度範囲です。
【抵抗温度係数】
温度変化による抵抗値の変化量。基本的に単位はppm/℃で示されることが多い。
※ppm=10^-6
【最高使用電圧】
連続で抵抗に電圧を印加した際に印加できる最大電圧値です。
実際には定格電圧とあわせて考える必要があります。※別途考え方を紹介します
【定格電圧】
抵抗値と定格電力から求められる直流電圧を印加した際に印加できる電圧値。
以下計算式で算出できる。
・定格電圧=(公称抵抗値×定格電力)^0.5
【最高過負荷電圧】
ある一定時間に印加できる最大電圧値です。
※最高使用電圧との違いを明確に理解する必要があります
チップ抵抗を使用する上での注意事項
チップ抵抗に限らずリード抵抗にも当てはまる話ですが以下3点があります。
交流電圧で使用する場合は実効電圧に変換して抵抗に印加される電力を求める
交流電圧など抵抗に印加される際の電圧値が変化する場合、その抵抗に印加される電力は実効電圧に変換して求める必要があります。
例えば、商用100V電源に抵抗が接続されていたと仮定します。商用100V電源の電圧はピークが約141.4Vであるのに対し実効電圧は100Vとなります。具体的には以下のような波形となります。
その場合、抵抗に印加される電力を求める場合、電力=印加電圧^2/Rで算出しますが印加電圧は実効値である100Vを使用します。
※平均電圧やピーク電圧を使用しないようにして下さい
抵抗に印加できる直流電圧は最高使用電圧と定格電圧で考える
抵抗の定格電圧の値は使用する抵抗値で変化します。そのため使用する抵抗値で最大何Vまで使用できるのか確認する必要があります。その際、定格電圧だけではなく最高使用電圧と併せて考える必要があります。
例えば、定格電力=0.25W、最高使用電圧=150Vの抵抗があるとします。以下グラフの青線が定格電圧の値となり抵抗値が大きくなるにしたがい定格電圧の値が大きくなります。赤い線が最高使用電圧の値で常に一定となります。グラフを見ればわかるように90kΩを境に定格電圧の値が最高使用電圧より高くなっています。
そのため、定格電圧<最高使用電圧、定格電圧>最高使用電圧の2つの領域に分けることができます。
・定格電圧<最高使用電圧の場合、定格電圧が印加できる最大電圧
・定格電圧>最高使用電圧の場合、最高使用電圧が印加できる最大電圧
パルス波形が印加される回路ではパルス限界電力(パルス限界電圧)で使用可否を検討することでサイズUPしなくてもいい場合がある
抵抗を使用する際に常に電圧印加があるところで使用するとは限りません。実際には以下のようにある一部の時間だけ電圧印加がある箇所で使用することもあります。
(一部の時間だけ電圧印加=パルス波形が印加)
その場合、Ppが定格電力を超えていない、且つVpが定格電圧を超えていなければ基本的に使用可能ですが場合により大きな抵抗を使用しなければならない可能性があります。そんなときパルス限界電力(パルス限界電圧)で検討することでサイズUPしなくてもいい場合があります。
例えば、パナソニック製抵抗のERJ6GEシリーズで200kΩの場合で考えてみます。ERJ6GEシリーズの定格電力は0.125W、最高使用電圧は150Vとなります。一方でパルス限界電圧の上限値は200Vとなります。
本来なら定格電圧<最高使用電圧の領域では定格電圧以下でしか使用できません。定格電圧>最高使用電圧の領域では最高使用電圧以下でしか使用できません。よって、使用できる最大電圧は150Vとなります。
ただ使用している箇所が上記のようにパルスの場合、条件次第の部分はありますがパルス限界電力の上限値が200Vのため、定格電圧>パルス限界電圧の領域では使用できる最大電圧は200Vとなります。
但し、注意点がありメーカのどの部品を使うかで変わりますがパルス限界電力(パルス限界電圧)は参考値で保証値とならない部品があるため選定の際は留意する必要があります。
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